外観や外周の形状は変えず、内部にある大断面の鉄骨梁の構造体を大胆に生かしたインパクトのある空間設計が秀逸。大スパンのLDKは、施主の好みであるヴィンテージ風にまとめられ、内装のセレクションにもセンスとこだわりが感じられる。むき出しにした鉄骨梁はヒートブリッジ現象を考慮し、付加断熱を行っているのも好印象。外皮性能も十分確保され、見た目以上の快適さと住みやすさを実現している。
既存家屋に隣接した築100年の古民家の建て替え事例。建て替え部分に高い性能を確保するのは当然として、身体の不自由なお父様が暮らす既存建物にも断熱強化を施し、温度のバリアフリーに取り組んだ点を評価したい。LDKの大きな吹き抜けは縦に視線が抜ける設計で、家族全員が一つの空間を共有できる造りになっている。建て替えと改修を巧みに織り交ぜた、設計者の高度なテクニックと力量を感じさせる事例である。
築150年を経た江戸時代の古民家の大規模リフォーム。いったん骨組みに解体し、家全体を持ち上げて基礎工事、防湿コンクリート工事を行っている。内装はもともとの古い建物のよさ、佇まいのよさを尊重しながら、古い建物の雰囲気に合った素材使いでインテリアと外観を仕上げている点が秀逸である。窓まわりや床、外壁の断熱性能も最大限向上させており、古民家の威厳を損なわずに快適さをアップさせた好例だといえよう。
築23年の住宅のリフォームにおいて、老朽化や汚れが目立つ設備の入れ替えだけでなく、温度差の少ない室内環境や耐震・耐久性の改善を視野に入れ、住宅性能を向上させていることに意味がある。性能面においても、新築の省エネ基準の性能をはるかにしのぐ断熱性能をリフォームで実現したことを評価。通風や日当たりのシミュレーション等も丁寧に行っている印象があり、次世代へと住みつなげる家へと再生している。
中古マンションのフルリノベーション事例。窓まわりのベンチ、キッチンの腰壁などのディテールがしっかり設計されており、それがシンプルな清涼感につながっている。マンションという限られたスペースでありながら、玄関を入ってすぐの場所に作り付けの書棚を設けたり、中央にバスルームを集めたりする発想がとてもユニーク。水回りを中心に、周囲を回れる動線もよく考えられていてとても使いやすそうである。
耐震性と断熱性を向上させたいという施主の要望をかなえるため、スケルトン状態とし、窓や床、壁、天井の断熱改修に真摯に取り組んだ姿勢を評価したい。空気環境の改善においても、吹抜けを設けることで光や空気の通り道を作り、換気設備も設けるなどの取り組みを行っている。窓も既存のものと交換するだけでなく、場所によってカバー工法や内窓の追加などの手法も取り入れるなど、上手な使い分けが光る事例である。
親夫婦との同居を機に、二世帯が暮らす家へと大規模なリフォームに踏み切った事例。リビングダイニングを中心に親世帯と子世帯のエリアが振り分けるなど、二世帯住宅としての動線や間取りがよく練られていて暮らしやすそうである。全館空調で夏は涼しく冬は暖かく、温度のバリアフリーで親世帯にも配慮。リフォームにもかかわらず、G1レベルの断熱性能を確保、セントラル空調で健康に配慮している点もすばらしい。
和室1室をリビングに取り込み、ひとつながりのLDKに改修。特筆すべきは、施主の要望で作ったリビングに面したウッドデッキ。リビングの床とフラットな仕様にすることで、ホームパーティなども楽しめる、第二のリビングの用途を持たせている。日ざしを避けるために軒の出を長く設定してゆったりくつろげるようにしたり、デッキの一部にタイルをあしらったり、設計者の細やかな配慮とセンスのよさが見て取れる事例である。
父親から受け継いだ築40年の愛着のある家。すべてを新しくするのではなく、和の雰囲気を最大限残しつつ、住みやすさを重視した空間設計が光る。使い勝手の悪かった和室は、格子戸や床の間の壁にグレーのタイルをあしらって現代風にアレンジ。リビングとキッチンまわりにモダンテイストのさまざまな素材を使っているが、色合いや間接照明などを上手に組み合わせ、非常に落ち着いた雰囲気に仕上げている点が秀逸である。
築16年の中古物件を施主好みの家にするためのリノベーション。掃出し窓を大きな開口に見立ててフルオープンにし、庭の景色を1枚の絵のように切り取った点が最大のポイント。庭の緑を取り入れ、暮らしの中に視覚的な彩りを与える設計力が見事である。キッチンをあえて南に寄せることで、そこに立ったときに見える庭の景色の美しさも計算の内だろう。日々暮らす人の視点に立った、細やかな工夫が見て取れる事例である。
築50年の外観の風情はそのまま残し、梁を見せたいという施主の希望が反映された、佇まいのよさが光る事例。プライベートゾーン以外は、建具をあけるとリビングと和室、ダイニングがひとつながりになり、家事動線も短いのがポイント。断熱、気密の確保とともに、暖冷房設備計画にも力を入れており、創エネルギーにも配慮している。昔の家のよさを継承しつつ、次世代へと継承するのにふさわしい快適住宅に仕上がっている。
築111年の古民家を次世代に残そうという意気込みが伝わる、古民家リノベーションの王道。和のテイストを残したまま余計なデザインを加えていないため、職人の卓越した技術と材の持つよさがストレートに伝わる事例である。解体時に出た古材を廃棄せず、加工し直して随所に利用する姿勢には頭が下がる。古材の再利用によって、新築では真似のできないデザインと風格が生まれている点を高く評価したい。
総評
高齢の父との同居を機に築33年の戸建てをリノベーション。LDKは約16畳と決して広いとはいえないが、LDと水回りスペース、父の部屋をうまくつなげ、三世代5人家族が気兼ねなく暮らせるよう配慮した空間設計が見事。それぞれの生活リズムに寄り添った、細やかな間取り構成が見て取れる。無落雪屋根への交換、断熱改修やセントラルヒーティングへの改修など、安全性や省エネへの取り組みも申し分のない事例である。