マンションのフラットな居住空間に、あえて段差のある子ども部屋を設置。スキップフロア特有の立体的な空間構成に加え、床下を大容量の収納にして使いやすくリフォームした。寝室や個室、トイレといった閉鎖的になりがちな空間には明かり取りの窓を設けたことで、戸外とのゆるやかなつながりをもたらしている。マンションで玄関を広くしたいという要望は多いが、土間を取り入れてうまくまとめている点もすばらしい。
間取りをほとんど変えず、細切れだった部屋の壁を取り除くことで使い勝手のいいLDKを実現。クセのない既存物件の長所をうまく生かし、新築のような佇まいに仕上げた無理のないリノベーションである。向こう側が見える収納棚と階段は、ナチュラルな木の風合いが室内の雰囲気と調和し、まるでひとつのオブジェのような印象。外からの光をほどよく通し、圧迫感のないしつらえで住まい全体に明るさと開放感をもたらしている。
総評
祖父の代から受け継がれてきたという美しい庭を、一枚の絵のように切り取って見せる手法が斬新。四季折々の庭の景色の変化を楽しめるよう、キッチンやダイニングテーブル、ソファを庭向きにし、どこからでも美しい庭が眺められるように工夫されている。開口部の壁をふかし、カーテンレールや窓枠をさりげなく目隠しした細やかな配慮も光る。かけがえのない庭の風景を、次世代に残すための細やかな工夫と着想を評価したい。