築140年以上の建物の風情をなるべく生かしつつ、耐震性や快適性を高めた、古民家リフォームの力作。デザイン面だけではなく床下の構造的補強、湿気対策など建物そのものに細やかな改良をプラス。寒くて暗い家が、職人ならではの高い技術力で冬暖かく、夏涼しい快適な住まいに生まれ変わった。古い梁や柱をあえて露出し、日本家屋風の外観の趣を程よく残すなど、既存建物の魅力をより際立たせるリフォームである。
南側にあった平屋を減築し、物置状態だった築100年近くの母屋をリフォーム。リビングには大きな開口のはき出し窓を設置して光を取り入れ、無垢の床材や珪藻土は明るい色味をチョイスするなど、無理のない採光計画が功を奏している。道路側に隣接する外壁は、見た目を考慮して格子や鎧張りの外壁を採用して落ち着いた仕上げに。随所に素材使いのセンスが感じられ、住む人が心地よく過ごせる住まいとなっている。
かつてお祖母様が暮らしていたという家を、孫世帯のライフスタイルに合わせてリフォーム。天井を抜いて開放感を出し、一部分を増築して大空間のLDKに。快適な動線と暮らしやすさを提案した好例である。元の間取りを生かしつつ、キッチンを2列に配置して、小上がりを設けるなど、大人数が集まってわいわい過ごせる楽しげなプランとなった。地場産の杉板や明かり取りの窓も、快適性アップにひと役買っている。
海外旅行好きの熟年夫妻が暮らす、築37年のリフォーム事例。「洋」のライフスタイルに合うよう、水回りをホテルライクな仕様にする一方で、開口部に障子を取り入れるなど「和」のよさもうまくミックス。開口部はカバー工法でLow-Eペアガラスに変更したことで、リフォームでありながら新築レベルまで断熱性能を引き上げている。家族構成や暮らしが変わることの多い、熟年世代へのリフォーム案として好例だといえよう。
思い出のある母屋をリフォームし、母親の介護もできる明るく広々とした空間を実現。すべてを新しくするのではなく、愛着のある部分や思い入れ深い部材を残すことを心がけ、画家だったお父様の絵が描かれたガラスをうまく取り入れたり、サニタリーの既存天井を残したりと、これまでそこで暮らしてきた人への細やかな配慮が見て取れる。家族の思いに寄り添いつつ、耐震性や断熱性をしっかり高めている点も評価したい。
子どもの独立を機に、夫婦ふたりの快適なセカンドライフをリフォームで追求。プランの中でも最も特徴的なのは、空間同士を動線でつないだ回遊性のあるレイアウトである。キッチンから洗面室への動線、LDKと主寝室の両方からアクセスできる収納など、空間の移動をスムーズにする卓抜した設計力もみごと。主寝室に続く鏡つきの扉は、空間を広く見せる効果もあるが、通気の面でも有効に働いていると思われる。
既存のハナミズキを生かした、ガーデンのリフォーム。室内とひと続きになった人工木のデッキスペースが、視覚的かつ空間的な広さを生み出すことに成功している。道路側に設置した目隠しスクリーンは、外からの視線をシャットアウトしてプライバシーを確保し、見た目の美しさにも貢献。室内に向かって設置された造作のベンチは、機能性、デザイン性ともにすぐれ、夜はスポットライトでより美しい情景をもたらすだろう。
築100年程度の建物を、両親と息子家族の二世帯で暮らせるようリフォーム。建主は建て替えも視野に入れていたようだが、あえて改修に踏み切ったことも評価したい。スケール感が大きい物件は高度な設計力が求められうえ、2階部分に水新たに水回りを設置したのも技術的にも大変だったと想像する。適度に吹き抜けを設けた二世帯空間は、2家族が互いに気兼ねなく過ごしたいという現代のニーズをうまく反映した模範例である。
築18年のマンションリフォーム。夫婦ふたりの快適な暮らしをめざし、既存の和室を取り払って約30畳の大胆なLDKを実現。明るさを重視したという空間は、テレビの背面の白いエコカラットや、書斎に通じるアクリル製の間仕切りがポイントとなっている。白×ダークブラウンの色使いも空間全体のまとまり感をプラス。すっきりと見せながら、内装や建具の工夫で光を拡散させる仕掛けが、みごとに実を結んだ事例。
駅前にある、昭和42年築に建てられた戸建てをリフォーム。敷地いっぱいに建っていた店舗併用の既存建物を減築し、駐車スペースと角地部分の見通しを確保。減築の際に問題になるのは、隣家の壁がむき出しになることだが、それを目隠しするために仕切り壁を設置している。この仕切り壁がカーポートの柱を隠す役割も兼ねており、細やかなテクニックが光る作品。塀に使った穴あきブロックも周囲に広がり感を与えている。
実家の隣にある祖父母の家をリフォームし、両親や兄弟家族がいつでも集まれる広々としたLDKを新設。隣家に挟まれた1階部分の暗さは、天窓を新たに設置することでうまく解消している。間口が狭くて奥行きの深い1階部分の一部をインナーガレージにして、雪の日の使い勝手を向上。道路に面するファサードのデザインは、あえて既存デザインを踏襲してかつての面影を残し、周囲の街並みに配慮した点も高く評価できる。
中古物件の全面リフォーム。屋根の形状を変えて折板屋根を採用し、外壁に2種類の焼杉をランダムに張るなど、オリジナリティあふれる外観がユニークな印象を与えている。子供室や寝室などの個室はあえて必要最小限の広さとし、その分LDKを広めに取ることで、家族のつながりを重視したプランニングも評価できる。屋根裏部分を改装して新たに中2階を作るといったアイディアも光り、高い力量を感じさせる作品である。
増改築を繰り返してきた築70年の古民家リフォーム。母屋の隣にある40年前に増築した建物を取り壊し、母屋に生活空間を集約させてコンパクトに仕上げた。昔の土間をあえて復活させ、近所の方たちも集える広縁を生かすなど、母屋の古い趣を際立たせる発想とテクニックが巧みである。最新設備を取り入れる一方で、随所に既存建物の古材を散りばめた仕上がりに、丹念に仕上げた職人の気概がうかがえる事例である。
総評
暮らしやすさとデザイン性を追求した、マンションリフォームの好例。既存の間取りはほぼ生かしつつ、素材使いや収納の確保で、快適さと機能性を追求する姿勢がうかがえる。湿気対策を兼ねた換気窓は、各室でくつろぐ家族の気配を伝える役割も果たし、非常に効果的。リフォーム前は暗く閉ざされていたキッチンに、手作り感のある腰壁を取り入れ、明るいオープンキッチンへと劇的に変わった点も高く評価できる。