ご高齢のお施主様を心配し、同居を決意した娘夫婦。母から娘への感謝を込めたリフォーム。もともとあった掃き出し窓を、両端が縦すべり出しで中央がFIXの装飾窓にすることで、LDKから庭を臨む明るく開放的な空間としつつ、窓回りの改修により断熱性・気密性も向上させた点が好印象。
窓から見える景色にこだわり、効果的に外の景色を取り入れた設計力がみごと。隣に建つ古民家と緑を切り取った窓からの景色は一枚の絵ハガキを見ているよう。殺風景になりがちなアルミサッシにはルーバー状の木製建具を組み合わせることで、機能性だけでなくデザイン性もアップ。視線の抜ける場所は対角に窓を配置するなど、綿密な窓の配置プランが快適さを生み出すことを証明している。
室内にいながらにして周辺にある木々の緑を存分に楽しめるのは、窓からの景色の切り取り方を熟慮した証だといえよう。スリット状の縦長デザインの窓を上手に利用することで視線の広がりも表現。道路からの視線は上手に隠し、落ち着ける風景だけを切り取るという細かな配慮も評価できる。杉板などの無垢材をふんだんに使ったナチュラルな室内は、ほっと落ち着ける癒やしの空間となっている。
30代女性一人暮らしのマンションリフォーム。使いづらかったI型キッチンをL字型にしてLD側に張り出させることで、対面式を実現したアイディアが秀逸。細長い間取りでありながら、キッチンカウンターがあることによって室内がカフェのような趣に。キッチンの手元を隠しながらリビングとのつながりを持たせた点、ステンレス素材の効果的なあしらいなど、トータルなコーディネートが光る作品。
1階が店舗スペースで、リビングや水まわりなどの居住スペースを2階に集約したプラン。真っ白なアイランド型のキッチンに楕円の木製造作テーブルを組み合わせることで、コンパクトさと使い勝手を両立させている。テーブルのやわらかなアール曲線が、白を基調としたダイニング空間にやわらかみと視覚的な広さをプラス。造作家具を効果的に生かした空間構成を提案している。
「家事のしやすさ」「家族のつながり」「家を楽しめること」をとことんまで追求した、設計力の高さがうかがえるプラン。L字型のキッチンの対面に作業カウンターを設けることで、住み手の使いやすさを重視。キッチンからダイニング、畳スペース、中庭への配膳もスムーズにでき、さらに作業カウンターの下を収納にして片付けも最短動線でできるようにするなど細やかな配慮が光る作品である。
愛犬との生活を大切にする建主の希望を随所に反映した住宅。勝手口から入ってすぐのところに愛犬専用バスタブ、シャワーを設置。脚を洗ってすぐに室内に入れるようにするなど、人にとっても犬にとっても使いやすいプランとなった。脱衣スペースの隣には、約6畳のランドリー室があり、洗濯や乾燥、収納までの動線が整理されたことで、一連の流れをスムーズにしている。
疲れをいやすための工夫を搭載したバスルームから、緑あふれる坪庭が眺められる贅沢な造り。夜はライトが美しい木々を映し出し、最高のリラグゼーション空間を生み出している。サニタリーとキッチンをひとつなぎにして、家事動線を確保。脱衣室の外にはウッドデッキを設け、洗濯物を干したり、裏庭への出入りをスムーズにしたりするなど、快適性とデザイン性の双方を両立させている。
地元の特産である檸檬をコンセプトにした、築90年の古民家の再生。400坪の檸檬畑が隣接する大自然に囲まれた立地の建物には、周辺の環境を生かして開放感のある入浴スペースを新設。ポリカーボネートで温室風にしつらえた浴室スペースは、外部とのつながりを追求した斬新さが魅力的である。檸檬の木の下で入浴するのはとても気持ちよさそう。浴室という概念を超えた独創的な新しさがある。
狭くて暗い印象になりがちなトイレ空間を間接照明やスリットを設置することで、空間全体にやわらかな光がまわり、落ち着いた印象に仕上がっている。一見シンプルな造りでありながら、全体に統一感と広がりを感じさせるのは、内装材や設備機器、造作カウンターなどを慎重に吟味しつくした成果といえるだろう。床面をタイルにするなど、日々の手入れを考慮した細やかな配慮も気が利いている。
トップライトからのやわらかな自然光で採光を確保した明るいトイレ。光が壁や床に差し込むさまは、訪れる人の気持ちを癒やす快適な空間に仕上がっている。床や壁は白で統一して清潔感を演出し、高級感のある漆黒のトイレが空間の引き締め役に。白×黒のコントラストは一見強く見えがちだが、自然光を取り入れることによってやわらかさと奥行き感を演出。空間全体をうまく調和させている。
小さい子供がいる家庭でも、おしゃれに暮らせる住空間を追求したプラン。白を基調とした明るいリビング・ダイニングのアクセントになっているのが、対面式キッチンのサイドにあしらったダークグリーンのタイル。天井はダークグレーのクロスを貼った下がり天井にすることで、居心地のいいカフェ風空間を実現した。異なる内装材をバランスよく配した空間から、設計者のデザイン力が感じられる。
農機具庫として使われていた納屋を住宅にリノベーション。古民家ならではの大きな横架材を吹き抜けの化粧梁として見せることにしたが、寒さが厳しい冬に暖気も上に逃げてしまうのが難点。そこで取り入れたのが開閉式のテント。暖気を逃がさずにためる目的で設置されているが、2階窓からの光をやわらかく取り込む効果もあり、冬でも明るく居心地のいい空間になっている。
古きよき伝統工法を生かしつつ、機能的な外装建材を随所に取り入れた現代版伝統工法の家。重厚な屋根瓦や深い軒、焼杉の腰板など日本家屋ならではの堂々とした外観はそのままに、外壁や屋根を外張り断熱と内張り断熱にすることで、室内の熱を逃がさないようにして暮らしやすさを実現。屋根の上にのせた太陽光パネルも、外観の美しさを損ねることなく美しく収まっている。
既存のガレージと裏のデッドスペースを整理し、お寺の檀家様用の駐車場とエントランスとして使えるようにしたプラン。プライバシー確保の仕切りには縦格子のフェンスを、扉部分には同じ建材の吊り引き戸を採用することで圧迫感を解消し、奥行きを感じさせる仕上がりに。ガレージを思い切って撤去したことが功を奏し、駐車場を含めたアプローチ全体が街に開かれた居心地のいい空間になっている。
既存の庭を使えるように目隠ししながら、街側にも緑を残し、プライバシーを巧みに確保。外からの視線を遮るには、駐車場から一段高くなっている部分をすべて塀で囲ってしまう方法も考えられるが、縦格子のフェンスと透過性のある建材をやや浮かせて設置することで、圧迫感のない造りに仕上げた。庭に光と風を取り込みつつ、室内から外の気配を感じられるよう配慮されている。
車を降りてから玄関まで濡れずに行けるよう、エントランスと駐車スペースの上に大きな屋根を設置。家族がくつろげる中庭空間として生まれ変わり、お茶を飲んだり、バーベキューをしたりとさまざまな使い方が可能に。道路側に縦格子のゲートとポリカカーボネート板の門扉を設置して軽やかさをプラスした点も、デザイン的に高く評価できる。暮らしに深みを与え、楽しさが倍増するプランである。
総評
建物の外観は、特殊な目地なし仕上げの吹付塗装ですっきりとした印象に。そこへシンプルなデザインの白い玄関ドアを合わせることにより、建物全体をよりスタイリッシュに見せる工夫が生きている。玄関ドアの周囲に取り入れた木の外装材は、ぬくもりだけでなく奥行き感や広がり感もプラス。エントランスが白を基調としたインテリアの雰囲気と呼応している感じも好印象。