現代風の「茶の間」を意識したという1階は、シンプルなワンルーム構成のプラン。「食事を作る」「食べる」「集う」という日々の営みが、ここに集約されている。大胆な吹き抜けで1階から中2階の畳室、2階へと縦につなげた空間は、建物自体が備えた高い性能によって実現。日本の住宅としてなじみ深いインテリアと、現代生活にフィットする新しいコンセプトをひとつの住まいに両立させることに成功した。
端正な外観が印象的な平屋の住まい。夫婦ふたりのためのコンパクトな空間には、静謐な空気があふれており、大きな開口部とウッドデッキによって戸外と室内とが一体化している。シンプルな空間ながら、寝室に付随する充実したウォークインクローゼットや、玄関まわりをすっきり見せるシューズクローゼットなど、住みやすさのためのこまやかな配慮もされており、「余生をここで過ごしたい」という建主への思いやりが感じられる。
ワンフロア45㎡以下という狭小住宅ではあるが、室内はスペースの小ささを感じさせず、外空間をうまくとり込むことでのびやかな空間を提供している。コンパクトな空間をすっきりと見せているのが、オリジナルの収納プラン。必要なスペースにデザイン性の高い収納庫が設けたことで、各室への物のおさまりもスムーズになり、空間に秩序を生み出した。杉の無垢材と鋼板を組み合わせ、外観は周囲とも違和感なくなじんでいる。
愛犬が快適に過ごすためのアイディアにあふれた住まいは、ひと目見ただけで建主からの愛情が伝わってくる。「ワンスペース(犬の部屋)」には、勝手口やシャワーを設置。リビングと自由に行き来できるが、来客時は締め切ることができるなど、家族と犬が快適に過ごすための配慮が生きる。自然素材をふんだんに使用した空間で、家族とペットがにぎやかに過ごす情景が自然にイメージできる住まいとなった。
木造でありながら、外観はマッシブな表現に挑戦。周辺の環境をじっくり読み込み、巧みに取り入れた空間は、戸外との程よい距離感を保ちつつ穏やかな光が取り入れられている。日常を営む住宅でもあり、さらにギャラリーという非日常を含んだ建物内は、立体的な空間構成が特徴。トップライトからの光の落とし方もすばらしく、日常と非日常、夫婦それぞれの生活が穏やかな表情で溶け合っている。
敷地条件に合わせながら外へ向けて「開く」「閉じる」を明快に切り分け、空間にメリハリを提供。「開いた」空間は開放的に、「閉じた」空間では親密な空間で過ごすことができる。オープンなLDKはリビングとキッチン、それぞれの床レベルを変えることで、ゆるやかに区切りながらも、つながりのある空間に。キッチンからの眺めも変化に富んでおり、各スペースでの楽しみ方が広がる住まいとなっている。
建主自らが企画したという異例の住まいは、平屋の建物は中庭を挟んでパブリックとプライベートを思い切りよく切り分けており、まさにオーダーメイドの仕様となっている。一切の無駄を省いた空間は、ストイックなまでの美しさを演出。寝室近くに配置された水まわりや、中庭に向けて大きく開かれた寝室など、「夫婦ふたりの家」だからこそ実現した大胆なプランからは、暮らす人の生き生きとした気配が感じられる。
寒さの厳しい北陸地方において、1次エネルギー165.4%を達成。住まいの断熱性・気密性を高め、吹き抜けを設けたことで、どうしても閉鎖的になりがちな冬期はもちろん、一年を通じて明るく、開放的な空間を実現した。温かみのある内装も心地よく、家族が長く、快適に暮らすことができる住まいに。窓から落ちる自然光を巧みに取り入れたプランと、環境に配慮したZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様も高い評価につながった。
住宅地の中の旗竿地という厳しい環境の中、SE工法でのびやかな空間を実現。1階から3階までの縦のつながりを生かし、限られたスペース感を感じさせない住まいとなっている。パブリックであるリビングは空間を高くとり、親密な時間を過ごすダイニングは陰をうまく生かして、日常の風景にメリハリを演出。特に天井高4.5mをとったリビングは印象的な空間であり、ハイサイドライトからの光が心地よく空間を照らしている。
建主から強く希望されたという眺望は、良好な景観に大きく開いたリビングルームによって実現。L字型に配した建物から、北西へ向けて設けた窓の向こうにはのびやかな景色が広がり、住まい全体のイメージを形作っている。造作家具によってダイニングとキッチンを一体化させ、LDKをまとまりのある空間に。木質感を生かした内装も温かみのあるデザインで、ここで過ごす穏やかな時間がイメージできる。
「家族が集まるリビング」「緑を眺めながら過ごせる空間」「使いやすいユーティリティ」といった、誰もが望むスペースをひとつ、ひとつ丁寧に実現。住まい全体がまとまっており、上質な空間に仕上がっている。回遊性のあるキッチンと家事室、水まわりは、働き盛り・育ち盛りの家族を快適にサポート。明るい光に満ちた玄関も気持ちのよいスペースに仕上がっており、心地よい暮らしへの期待を誘う。
住まいの中心に浴室・洗面室を配置したコアプランを採用。居室をそのまわりに配置した。あえてタイトにまとめたダイニングやリビングスペースが、家族の親密な時間を演出。吹き抜けで家全体がつながっており、家中どこにいても家族の気配が感じられる、温かな「わが家」のイメージを提供している。「閉じるスペース」と「開くスペース」を吟味することで、周辺に対して自由に応答する質の高い空間に仕上がった。
総評
室内に足を踏み入れた時に感じる開放感は、巧みなプランニングの結果。自然光を効果的に取り入れるよう、LDKは敷地に対して斜めに配置されており、大きな開口部からはふんだんに光がさし込んでいる。穏やかな色合いのインテリアもプランと相性がよく、入居後の心地よい生活がイメージできる住まいに。光あふれる空間と機能性は、北海道という厳しい環境の中でも快適な毎日を提供するだろう。