引き戸の玄関ドアをナチュラルかつスタイリッシュに見せる提案が秀逸。「カフェ風のおしゃれな玄関にしたい」という施主の要望で、玄関まわりは無垢材を使ったポーチを提案。引き戸でありながら、デザイン性の高いカフェ風スタイルの玄関ポーチに仕上がっている。さらに家族が毎日出入りする玄関ホールには、大きめの窓を設置して、明るく暖かな光がさしこむ空間に。住まう人の視点に立った、きめ細やかな配慮を評価したい。
窓から目に飛びこんでくるのは、大パノラマの青い大海原。視界の遠くには山並み、青い空が広がり、「いつまでも眺めていたい」と思わせる卓越した設計である。高台のロケーションを生かし、リビングの窓はフルに開放できるワイド3.4mの全開口サッシを採用。窓の外には赤く塗装した庇、パンチングメタルやフラットバーで製作したバルコニーを設置するなど、安全面を考慮しつつ、デザイン性にも最大限配慮した姿勢がうかがえる。
旗竿地で南側からの採光がままならないこともあり、LDKを2階に配置したプラン。キッチンカウンターと造作ダイニングテーブルを「くの字」に配置することによって、調理から配膳までスムーズに作業できるようにしたプランニングが斬新。キッチンの隣にちょっとした書き物やパソコン作業などができるデスクコーナー、コンロ正面にスチール棚を造作するなど、家事効率をアップさせる細かな配慮がされている点もすばらしい。
キッチンは床をタイルにすることで掃除がしやすいように設計。夏はひんやりと涼しく、冬は床暖房の効果で暖かく過ごせるプランニングが見事。天井をあえて下げ、そこにやわらかな光を演出する間接照明を取り入れることで、落ち着いた空間に仕上がっている。キッチン横にある勝手口は引き違い戸を設置して意匠的に隠すほか、玄関からパントリー、キッチンへの動線もよく考えられていて、家事をラクにする工夫が随所に見られる。
車椅子生活にも対応できる洗面設備、跳ね上げ手すりを設置したトイレなど、暮らしやすさを重視した設備機器のセレクションが秀逸である。随所にエコカラットを採用するなど、快適性を高める工夫も評価したい。住まいの老朽化、子どもたちの独立によるライフスタイルの変化などを理由から建て替えた家だが、今までは2階がリビングで、年齢の面からも体に大きな負担となっていたため、主要な居室と水まわりを1階に集約させた好例である。
高さの制限や日照、駐車スペースなどの要因から、2階に水まわりスペースを配置。LDKの広さを確保するため、浴室と洗面、トイレはあえて一体化した“3in1”の仕様に。コンパクトでありながら、快適さと機能性を追求した独創性が光る作品。浴室の窓と洗面カウンターの高さをそろえてあるので全体がすっきり見え、足元からも光が入り明るさも十分。清潔感あふれる素材選びと、優れたデザインセンスを高く評価したい。
高級リゾートホテルのようなゴージャス感あふれるこだわりの浴室、洗面室の提案が斬新。冷たい印象に見えがちなタイルだが、モノトーンな配色の中に赤や紫、銀を取り入れたガラスモザイクを浴室に採用するなど、質感と色を工夫して理想のデザインを追求する独創性を高く評価したい。一方で、鏡面タイルの使用により、掃除のしやすさと経年劣化による変色、汚れを軽減するなど、きれいを保つ対策にもしっかり目が向けられている。
リゾートのような家が欲しいという施主の希望で、リビングから直接出入りできる大きなプールを設けた独創性あふれる住まい。デッキ側、室内側の両方から出入りできるトイレは、開放感たっぷりで使う人の楽しさが伝わってくるようだ。プールに入っている人が気兼ねなく使えるように、トイレの鍵を室内側の内部からかかるようにしたり、デッキ沿いの浴室をジャグジーとしても使えるようにしたりするなど、リゾート気分で日常生活を満喫させる、巧みな趣向が凝らされた住宅である。
1坪ほどの1階のトイレは、デザイン的な美しさが際立つ空間。洗面スペースとしても使い勝手がいいようにコンパクトにまとめられており、ミラー上下の組子が間接照明のやわらかい光を映し出す。珪藻土の壁や床の磁器タイル、焼き物の水洗ボウルなどがセンスよくセレクトされ、すっきりした和の趣を醸し出している。2階のトイレは、明るさも十分で圧迫感や狭さを感じさせない作り。消臭効果のあるエコカラットの使い方も上手い。
「木に囲まれた家で健康で穏やかな暮らしを過ごしたい」という施主の希望で、木材をふんだんに使ったバリアフリーの住まいが完成。平屋造りのため、リビングから出入りできる位置に浴室、洗面、トイレなどをまとめて配置しているが、無機質になりがちなトイレに風情のある木材を上手くあしらい、部屋のようにリラックスできる仕上がりとなった。壁材には消臭効果のある楠を選ぶなど、木材のプロならではの配慮が随所に行き渡っている。
1階は重厚感のある空間、2階は明るさを感じつつ、経年変化する木の風合いが感じられるようにプランニングされた住まい。リビングの一角に造作のワークスペース設けているが、壁ではなく、あえて多用途に使えるオープンな棚で仕切るアイディアが斬新。開放感を損なわず、かつプライベート空間として機能させる有用かつ実用的な提案である。リビング全体の効率的な採光、通風計画を妨げずにデザイン性を高める点でも高く評価できる。
限られた敷地の中で、各部屋をステップフロアでゆるやかにつないだ5層の家。素材感を大切にしたフローリングの床材、各フロアをつなぐ階段、リビングの壁一面に使ったエコカラットなど、セレクトした内装材はどれもシンプル。色合いの選択にも統一感があり、明るくて美しい空間を生み出している。吹抜けの壁は、立体的に仕上げたガラスタイルで空間を艶やかに演出するなど、ディティールの見せ方にもこだわりが感じられる。
「間仕切りや扉で細かく仕切りたくない」という施主の希望で、玄関から1階トレーニングルーム兼寝室は段差処理だけを行ったオープンな空間に。2つの空間をインテリア格子でほどよく仕切ることによって、明るさ、開放感を両立させた点が上手い。2階のLDKへつながる螺旋階段は、玄関ホールの意匠的なアクセントにもなっており、吹き抜けを設けることによって採光と通風を確保。内装建材の工夫で居心地のよい住まいが実現した。
玄関ポーチの道路際に、閉塞感を感じさせない細縦格子のスクリーンを配置した好例。外からの視線をゆるやかに遮りつつ、格子のすき間から光や風が抜け、圧迫感のない見た目に仕上がっている。間口、奥行き方向にデザインされた立体的なフレームが意匠的なアクセントになるとともに、家と外まわりとのつながりに一体感をもたらしている点を高く評価したい。階段にダウンライトを設けるなど、安全面も十分に配慮された設計である。
リフォーム前は、玄関前の高低差がスロープと階段で強引に作られていた印象。リフォームによって安全に、かつゆとりをもって昇降ができるようになった好例。道路の入り口部分にゲートを設け、心理的な入り口を明確にしている点も高く評価したい。小さかった玄関ポーチと庇は、ポーチを延長してプラスGで庇を造作。階段に設置されたダウンライトやスポットライトで、帰宅する家族がホッとできるファサードが出来上がった。
何もなかったオープンな外構をクローズ外構に変更した好例である。門扉とフェンスを木目調の素材にすることにより、和風の建物に合った統一感のある外構デザインに仕上げた点がすばらしい。門構えをあえて斜めにし、門前にゆとりを持たせている点も評価のポイント。壁にあけた小さな丸窓は壁の圧迫感を軽減すると同時に、デザイン的なアクセントにもなっていて、見た目と機能性の両方を追求した設計者の力量がうかがえる作品である。
プラスGのフレームでアプローチを仕切り、建物とつなぐことで一体感を演出。そこへ柿渋色の縦格子スクリーンをプラスすることで奥行きが生まれ、和風建築にぴったりの外観が出来上がった。既存の樹木と大きな石はそのまま生かし、灯籠を移設して中にライトを仕込むなど、平面的な景観を額縁効果で美しく見せる手腕を評価したい。夜には夜空の月と灯籠から光を放つ三日月が同時に見える、魅力的なプランに仕上がっている。
総評
限られた敷地の3階建てプランだが、家族がくつろげるよう1階の玄関ポーチに子供が遊べるブランコを設置。面積をあえて広く取ったことによって、来客をもてなす素敵なウェルカムポーチとしての役割も果たしている点が秀逸である。玄関ドアにはLEDイルミネーションガラス、壁面には職人が手作りしたヘリンボーン調の木材装飾をあしらうなど、遊び心とデザイン性があいまった、楽しい雰囲気が伝わる作品である。