規 模:木造平屋建て
設計・施工:サンハウス
自然に恵まれた環境に違和感なくなじむ
焼スギ板で仕上げた平屋の家。
里山の景色を借景として生かすために
あえて日当たりのよい南側は閉じ
眺めのよい東西に大きな開口を設けました。
2回目の妊娠を機に、実家の畑を宅地転用して家を建てることにしました。周囲を畑に囲まれているのどかな雰囲気の敷地です。ただ、南側の隣地に大量の太陽光発電のパネル群が乱立しているのが気になっていたため、あえて日当たりのよい南側は閉じ、景色のよい東西に向けて建物を配置しました。
ダイニングキッチンには、見晴らしのよい東向きの大きな開口を設置。天井までの大型サッシは枠が見えないタイプを選んだので、景色がクリアに見えます。朝ご飯を食べながら、朝日が昇るのを眺めるのも楽しみのひとつ。平屋の建物ですが、切妻屋根の小屋裏を取り込み、ダイニングキッチンに吹抜けを設置しました。縦と横に視線を広げることで、約8畳のスペースも実際以上の広がりが感じられるスペースになっています。
ダイニングキッチンは、庭から1.8m程セットバックさせ、この応対したスペースにテラスをつくりました。このダイニングスペースに対し、リビングは庭側に張り出すようなデザインです。空間を雁行に配置することで、ダイニングとリビングに程よい距離感が生まれました。
リビングは床レベルを少し下げ、天井高も抑えたことで、こもり感が出て落ち着けるスペースになりました。造作のソファや畳の上でごろ寝をすることもできます。庭の眺めが楽しめるサッシには、景色を絵画のように切り取るピクチャーウィンドウを採用。デザイン性の高い木格子が、和の印象を演出します。ダイニングとリビングの間には内窓を設置。シチュエーションに合わせてこの内窓を開閉することで、家族間の視線のつながりを調整しています。
キッチンは、コの字型のオープンスタイルを採用。吹抜けのあるダイニングと連続していますが、天井高を変えることで空間にメリハリが生まれました。ダイニングとの間仕切りがわりに、作業カウンターを配置。買ってきた食材をとりあえずここに置き、冷蔵庫や棚に振り分けられるのも便利です。また、キッチンカウンターの隅にはデスクを造作して、書類管理や子どもの宿題に利用しています。
水まわりでのこだわりは、脱衣室とは別に設けたランドリールーム。ここで洗濯した衣類は、窓の向こうの物干しスペースですぐ干すことができます。雨天時には、このランドリールームで室内干しできるのも便利。洗面台は通路上に配置して、水まわりへの動線上に趣味で育てているイモリコーナーを設けたので、水槽のお手入れがラクになりました。
家づくりを依頼したのは、地元工務店の「サンハウス」。冬でも暖かく過ごしたくて、高断熱・高気密住宅を得意とする工務店を探し、さまざまな住宅コンテストで受賞した実績をもつ同社をSNSで見つけました。高性能住宅であることはもちろん、自然素材を多く取り入れ、デザイン性の高い住まいを作っている点も依頼の決め手のひとつです。
平屋の住まいは空間が単調になりがちですが、部屋を雁行させる配置を提案していただき、家のなかにいろんな居場所が生まれました。断熱等級はG3と、この地域にしては高いグレード。希望通りの断熱性・気密性に優れた住まいは、エアコン1台で1年じゅう快適に過ごせるので、非常に満足しています。
私たちが暮らすのは、隣地に地域の名産である蕎麦畑を望み、さらに先には阿武隈山地の裾野を見晴らすことができるエリアです。この風景のなかに溶け込みつつ、存在感を示すことができるような外観を希望し、黒の焼スギ仕上げの住まいが生まれました。またこの地に古くからある民家のデザインを意識して、寄棟の屋根形状を採用。雨樋をなくし、破風板を斜め下向きに設置することで、軒先がシャープな印象に仕上がっています。黒く塗装した軒天で、モダンなテイストも加わりました。
暮らしに車が欠かせない環境なので、通り抜けできる車寄せをつくったのが大成功。非常に重宝しています。コンクリートブロックと砂利でストライプ柄に仕上げました。
リビングには、枠のないサッシを採用。木格子が周囲の視線を遮断します。
第1種換気の給気口は木格子で隠して意匠性を高めました。
ダイニングとリビングの間に内窓を設置。開閉により、シチュエーションに合わせて視線のつながりを調整できて便利です。
通路上にあるオープンな洗面台は、家具調の造作カウンターやこだわりの照明器具でドレスアップ。奥にランドリーコーナーが続きます。
廊下沿いに設けたカウンターは、ご主人が飼育しているイモリのための場所。廊下を移動するたびにイモリの様子を観察できます。
外壁全体を焼スギ板で覆った外観。軒天まで黒く塗装し、モダンな印象に。
※この記事は個人の感想に基づいて制作しております。
写真:①②③アドブレイン 塚本浩史 ①②③以外 渡辺慎一